「こんな風習、ありえない!」

 陽人さんの一件は両親に、そしてすぐさま仲人へと伝わった。
 
「あんな人を紹介するなんて、村田さんはどうかしているわ!」

 私の見聞きしたすべてを知って、激怒する母。その怒りは女性にだらしがない当の陽人さんのみならず、彼を見合い相手として斡旋した仲人・村田さんにまで飛び火した。

 一方で冷めた様子の父親。
 呑気にテレビを見ながら、私の話を聞いているのだか、いないようだか……。
 娘のために怒るところでしょ!?

「ねえ、お父さん聞いてる?」

 ヒートアップした状態の私はつい、父親への当たりもきつくなる。
 父はテレビに視線をやったまま、
「聞いてるよ」
と欠伸交じりの返事。

「ひどいと思わないの!?」
 父親に苛立ちをぶつけてもしかたないのに……。ちょっと自己嫌悪。