店の外まで陽人さんを連れ出す。
 表情は――能天気そう。
 一体どういうつもりだと、こんなに呑気な顔ができるわけ?

「どういうつもり?」

 自分のことが外から見えているわけではもちろんないので、どれほどの剣幕だったのかはわからない。
 けれど、完全に委縮している陽人さんを見る限り、なかなかのものだったのだろうと推測できる。

「……見ての通り」

 そこから陽人さんが話し出した内容は、驚きを通り越して呆れるしかないものだった。

 曰く。
 やはりサトミは陽人さんの彼女で、学生時代から付き合ったり別れたりを繰り返す腐れ縁。
 しかし陽人さんの家とサトミの家とでは「家柄が釣り合わない」らしい。
 だから「家柄の釣り合う」女性と結婚し、サトミとは恋人関係として交際を続けていくつもりだった、と。
 それは特に珍しいことでもなんでもなく、この村では過去から現在に至るまで当然のこととして行われてきたことらしい。
 むしろ、「嫁」とは別の「愛人」が多ければ多いほど「甲斐性のある男」として尊ばれるのだと。自分の父親や祖父も妻とは別に「愛人」を持っていると――。