水色のフレアワンピースにハイヒールという無難な出で立ちに着替えて、玄関の辺りでそわそわと陽人さんの到着を待つ。

「あらひばり、もうデートの約束できたの? 順調じゃない」
 まだパジャマ同然の姿の母が呑気に言う。
「お願いだからその格好で外には出ないでね? 今から迎えに来るから」
「へーえ、頼りがいのある男の子ねえ。ね、都会での恋はもういいの?」
「いいのいいの、気にしないで」

 心の傷をえぐるな!

 と言っても、母は何の事情も知らないのだが。


「こんにちは、お迎えに上がりましたー!」
 パジャマの母を奥の部屋に押しやって、玄関の戸を開ける。

 そこには昨日のスーツ姿とは違って、ナチュラルなTシャツとチノパン姿の陽人さんが立っていた。
 イケメンは何を着てもイケメンだなあ、と感心する。
 きっとこの格好は私が暮らす街では絶対に「おしゃれ」の部類には入らない。
 でも彼が着ていると「ダサさ」みたいなものは排除されるのだ。

「お迎えありがとうございます」
 ペコッと頭を下げて、彼の軽自動車に乗り込む。