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 見合いはあっという間にお開きになった。

「ひばりに合う人だと思うぞ」と父。
「すごく明るくて、感じのいい人だったわ」と母。
「身元も確かだし、いい大学を出ている。親としては何の心配もないよ」
 さらに父も念を押すので、
「私もそう思う。結婚するかどうかはまだこれからじっくり考えていいんだよね? じゃあ、村田さんにオーケーの返事をしておこうかな」
と、気持ちを固めた。

 農家のお嫁さんになるというのは大変なことだっていうことくらい、子どもの頃から知っている。
 もう都会の生活には戻れない。
 でもそもそも私には都会が向いていなかったのかもしれないし……。

 そんな思いもあって、仲人さんにはその日じゅうに「大道寺さんのことが気に入りました」と電話しておいた。

「あら~それは良かったわ! 大道寺さんもひばりちゃんのこと、気に入ったみたいよ」

 互いにいい印象を持っていたようで、ひとまず安堵。

 トントン拍子に前に進み出した私の婚活。
 田舎の家にいると、浩太郎と過ごした日々がずいぶん昔のことのように思えて……。

 って、いけない、いけない。
 もう彼のことは忘れるべきなのに。