声を裏返しつつも、ぎろりとにらみつける眼鏡の奥の視線は、猛獣のように私を射すくめる。

「うそでしょ、明らかに年下じゃないですかっ」

「はい。年下に間違いはありませんが、何か問題でも?」

 それじゃ突っかかっているように聞こえない?!とこっちがおろおろするほど淡々とした言い方で浩太郎は答えた。

「ひどい。やっぱり男の人って、若い女の子が好きなんだ……」

 聞こえるか聞こえないかくらいの小声で、しかし恨みがましく発せられた言葉。
 こらえきれず、私は思わず口を挟んでしまった。

「あの、そういうことでは、」
 しかし全く聞き入れられることはなく、彼女は大きく息を吸い込んだ。

 吐き出されたのは――



「ロリコン! 変態! 真面目の皮被った女ったらし!」



 道川佐央里の声はアーケードに反響し、わんわんとそこら中にいた通行人の鼓膜を刺激した。

 自ずと、我々は人々の好奇の視線を浴びることになる。やめてくれ!

 気を高ぶらせている道川さんとは対照的に、浩太郎は依然として冷静なままだった。
 マネキンかっ、と言いたくなるほどに、表情が動かない。