道川佐央里を目の前にして、凍り付く私たち。

「ええ、道川です。覚えてたんですね。意外でした」

 彼女は思い描いていた以上に聡明かつシャープな雰囲気だった。
 浩太郎の話を聞く以上、清楚でおっとりとした雰囲気の女性だと思っていたのだが……。

 年齢は彼より1つ下のはずだったから、今は31歳ということになろう。
 パリッとスーツを着こなし、大人の女性らしい品格を漂わせている。

「そちらの方は……?」

 彼女は敵対心丸出しの目つきで、私を指さした。間髪入れず、


「僕の恋人です」


「!?」

 そんなにハッキリ言っちゃう感じですか!?
 気を害するかもしれないでしょ、もっとオブラートに包みなさいよ!

 と、声にすることもできず、「どうも」と一礼する。
「この人が婚約者?」