浩太郎がトイレへ行ったのに続いて私もトイレへ行き、簡単に化粧直しをする。
 こういう時鏡を見ると、「あー、こんなに崩れた化粧でさっきまで彼氏と顔を合わせてたんだ……」と自分に失望するものだ。
 あまり待たせてもいけないし、でも崩れっぱなしは嫌だし。
 複雑な乙女心である。もはや乙女と呼ばれる年齢ではないが。

 席へ戻ると、
「もう遅いし、明日も仕事だから切り上げようか?」
 私のグラスが空いているのを指さし、浩太郎が告げた。
 もう9時半も過ぎた。明日も早いし、ここまでかしら、と私もそれに同意する。
「飲みすぎちゃったから」
 私がそう言ってレジの前で財布からお札を取り出すと浩太郎は、
「もう支払ってるからいいよ」
「え、いつの間に?」
 そう尋ねてから、きっと私がトイレへ行っている間に済ませちゃったのか、と気づく。