占い師とはいっても、水晶玉が机の上に置いてあったり、紫色のカーテンがかかっていたり、ベールを占い師本人が被っていたりするわけではない。
 50代後半といわれる占い師先生は、ごく普通のカジュアルワンピースに、シンプルなピアス、普通の眼鏡。一般人とそう変わらない外見が、若者には受け入れられている。
 話し方もサバサバしていて気持ちがいい。

「名前と誕生日を教えてくれる?」
 私の答えを、手元のタブレットに入力し、鑑定が始まる。今時の占いってタブレット使うんだなあ、と私は感心する。

「あなた、だいぶ苦労人ねえ」

 ものの十数秒後。
 先生は同情する雰囲気でもなく、あっさりと告げた。

「今まで男で苦労してきたでしょ」

 まるで私の半生を知っているかのような、当然といった口調で先生は尋ねた。
 中途半端に同情しないその言い方は、私の心をかえって軽くしてくれる。
 我々は一同、「おお~」と歓声を上げる。
「その通りなんです」

「でしょうね。あなたが生まれ持った恋愛運は最低だもの」

 即答。

「さ、最低!?」
 バッサリ切られてしまいました、私の恋愛運……。
 ほとんど先生を責めるかのような反応に、先生は首を横に振った。

「こればっかりは仕方ないわ。生まれつきの星だから。恋愛には不向きね」
 衝撃の判定結果に、体が勝手に震えだした。
「じ、じゃあ一生独身ってことですか!?」
 それじゃああんまりだ。
 一応私には結婚願望もあるというのに。
 しかしそのあと告げられた占いに、私は戸惑わざるをえなかった。

「いいえ。恋愛に不向きだからと言って、結婚に不向きとは限らないわ。むしろ結婚運はいい星ついてるくらい」
「……つまり、どういうことでしょうか?」
 先生は厳しい表情で私を見据えた。おのずと背筋が伸びる。友人たちがかたずを飲んで先生の言葉を待つのが、背中でわかった。

「あなたは、自分が心惹かれる男と結婚しちゃダメ。
 そいつら全員クズだから」

 クズって言っちゃったよ!?
 えらくハッキリものを言う先生である。(それが人気の理由だけど)

「あなたと相性のいい男は、あなたが激しく愛する男ではないわ。そうね……クソ真面目で話してても退屈に思える男と、幸福な結婚ができるって、星が教えてくれてる」