グイッと強い力で肩を引っ張られたのは、その時だった。浩太郎が座っているのと反対側の肩に、骨張った手が触れられ、浩太郎側に力強く引っ張られたので、自然と私は浩太郎の肩に頭を乗せる形となった。
「えっ!?」
 とっさには状況が読めなかった。まず最初に思ったのは、第三者が後ろからいたずらをしかけたのではないか、ということ。

 でも、そうではなかった。
 私の肩に手を回し、抱き寄せていたのは、結城浩太郎その人だった。

「ひばり」
 浩太郎が耳元でささやく。熱い吐息が、耳朶をなでた。
 ドキリ、と胸が跳ねる。いつもの浩太郎の声や、話し方とは全く違う。
「この味……当ててみようか」
「う……うん」
 どきまぎしつつ、おずおず頷いた。何だろう、この違和感は?

「これ、運命の恋の味がする」