ぶるぶる、と頭を激しく左右に振る。
 聞きたい。
 でも怖くて聞けない。
 これまで恋愛では失敗ばかりしてきた。今度こそは、失敗したくない。
 浩太郎を私は信じている?
 信じていない気持ちがあるから、怖いの?

 正面切って尋ねて、浩太郎は答えてくれるだろうか?
 自然に答えさせる方法って何かないだろうか?

「ひばりちゃん、乾杯」
「……か、乾杯」

 カチンとグラスを合わせる。
 舌を転がり喉の奥に流れていく辛口のワイン。

「今日の出張は、どういう出張だったの?」

 とりあえず仕事の話に逃げてみる。何かとっかかりがないかと手探りだ。

「新しい薬の社外プレゼンテーションだよ」
「へえ、どんな?」
「まだ詳しくは言えないから残念なんだけど……消化器系の病気に効果がある薬、とだけは言えるかな。従来の薬よりも圧倒的に安くできそうなんだ」

 そこからしばらく浩太郎による、いかにして価格を抑えられるようになったかのプレゼン。
 
 うーん、この話の流れで、どうやって浩太郎の過去に切り込めばいいんだろう?