結城さんはふと足を止めて、私を向き合った。
 眼鏡のレンズに、夜景の明かりがちかちかと反射している。

「朝井さん。あなたの常に自己研鑽し続ける生き方や、人に気遣える優しい性格が、素敵だと思います」
 その少し緊張交じりの表情や声音に、私は息を呑んだ。
 じっと真っすぐに見つめられて、ドキドキしてしまう。
 それから結城さんは、はっきりと私にこう告げた。


「まだ出会ったばかりの私達ですが、結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか?」

 え……?
 しばし私は固まった。
「け……?」
 結婚前提!?

 私は動揺を隠せなかった。
 今日正式に交際を申し込まれるとも予想していなかったのだから、結婚前提かどうかなど言うまでもない。
 まだ2回しか出会っていないのに、結婚を前提とした交際。
 最近は、交際0日婚なんてのも話題になっていたりするけれど。
 普通、もうちょっと回数を重ねてからだよね?

「え、ちょ、あの……その、」
 何か返事をしようとしても、うまく言葉にならない。