そんな風に私を褒めるものだから、私は照れと恥ずかしさで、思わず歩調を速めた。
「まさか! 買いかぶりすぎです!」

 頭の回転が速いなんて、これまで25年の人生で言われた回数など、0である。皆無だ。
 誰も私の頭なんて褒めてくれなかった。
 おしゃれのセンスとか、化粧の巧みさだとか、そのあたりのことを大学時代に褒められたことはあっても。

 つまりそれは、私が表面的で薄っぺらい女子であることを意味していたのだが。

 翔馬を振り切ってから、多少は自分の中身を磨こうとしてきたのだが……その甲斐があった?
 いや、そこまで調子に乗っちゃダメ?

――どちらにせよ、結城さんが、私の中身を褒めてくれた人、第一号だ。