すると、吹き付けていた風が弱まり、轟音が次第に消えゆき、歪んでいた地面が元の形状を取り戻し始めた。

 グラウンドに引かれた白線が、フェンスが、桜の樹木が、鉄棒や用具入れやスコアボードが、瞬く間に復元した。

 雲は消え、太陽が姿を現した。

 そしてわたしたちの学校のグラウンドの風景が蘇る。複数人いた松本くんの分身たちももう見えなくなっていた。

「まるでこの世界の神様ですね」

 小神が呟くのが聞こえる。ほっとしているらしい。

 松本くんはといえば、茫然としてピッチャーマウンドの上にへたり込んでいた。

 その目には光がないというか、焦点が合っていない。

 わたしと小神はゆっくりと彼のもとへ歩み寄った。わたしが彼の前にしゃがみ、

「松本く――」

語りかけようとした、その時だった。



「あなたの人生がどうなろうと私たちには関係のないことです」



 小神が真っ先に放ったのは、そんな一言。