「『はい』は一度で構いませんが、まあいいでしょう。そこは私の寛容さで許してあげましょう――と言いましたが?」

 平然と小神は答えた。

……本当か? さっきと言っていること違うような気がするけれど……。

 さてその松本くんですが、と再び小神はもとの話題に戻った。

「松本大輔。十六歳。七月十八日生まれ。血液型O型。身長一七九センチ。右投げ左打ち。四人兄弟の長男。市立豊池小学校、および市立豊池中学校卒。六歳の頃から地域の少年野球チームに所属。ずば抜けた才能を持ち、中学・高校と野球部に所属し一貫して四番かつエースを務めている。現在の学業成績は学年トップ。志望大学は――」

「ち、ちょっと待って!」

 野球名鑑のプロフィールを読みあげるかのようにすらすらと赤の他人の個人情報を唱える小神にわたしはストップをかけた。

「小神さん、あなた、松本くんとやらとふかーい知り合いなんですかっ?」

「いいえ。話したこともありません。もともとわたしはこのあたりの土地の出身ではありませんしね」

 じゃあどうして今年わたしが同じクラスになったばかりの一生徒のことを詳細に知っているんだ!

 小神のその言葉は、わたしの頭に混乱を来した。きっと違法な手段を用いて個人情報を盗み出したか、あるいはストーカーまがいの行為を通して松本大輔くんについて知ったかのどちらかに違いない!