松本くんって誰だよ、と思ったわたしは担任教師から配布された「二〇一五年度 二年四組名簿表」をかばんから取り出し、新クラスの顔ぶれを確認したところ、

わたしの名前である「星野 かおる」のすぐ下に「松本 大輔」の名を見つけることができたのだ。

 これが午前中の出来事である。

 つまりわたしはわけもわからず松本くんの話題に巻き込まれているというわけで、これはほとんど事故のような巻き込まれ方と言ってもいい。

 迷惑だ。

「あなたの出席番号三一番のすぐあと、三二番が松本大輔くんです。この事実に間違いはありませんね?」

 こう尋ねられると、なんだか尋問にかけられているような気分になる。不快極まりない。

「もっと他の聞き方できないの?」

 不快さのあまり、年上だということも忘れてわたしは敬語なしで話す。

 だいたい年上の小神がわたしに対して丁寧語というのがまず気に触るのだ。

 だいたい男でしかもまだ高校生なのに一人称が「私」なのも耳触りだ。

「とにかく私の質問に答えてください」

「はいはい。松本くんの出席番号はわたしのひとつ後ろで間違いないですよ」

「『はい』は一度で構いませんが、まあいいでしょう。そこは私の星野さんに対する愛情で免じてあげます」

「い……今なんて言った!?」

 わたしの耳がおかしくなければ「愛情」に聞こえたんだが!? いったいこの男、何を考えているんだ!?