いずれにせよ、そのたったコンマ数秒の間、わたしの目の前にいたのは、とても小神とは思えない男だったのだ。

「松本くんはその夢の中で我々の高校の食堂にいました」

 小神の声に、わたしははっと我に返る。

 その時すでに小神は普段通りの表情へと戻っていた。

 ちょっと残念、と思ってしまった自分がいた。

「松本くんはとんかつ定食を注文し終え、ほかほかのとんかつとみそ汁、山盛りのご飯の乗ったプレートを両手に、生徒でごった返す食堂の中を席を求めて歩いていました。

 と、その時です。

 ついさっき自分が立っていた注文カウンターの列にいる上級生と思しき男子生徒がこう言ったのです。

〈きみ、日替わりランチを注文するなんてナンセンスだ。ギョーザを頼みたまえ、ギョーザを。ここのギョーザは一級品なのだよ〉

 するとその男子生徒の前に立っていた明らかに一年生の女子生徒がこう言いました。

〈ギョーザなんて食べたくないです。口がにおって午後の授業に出られなくなるじゃないですか〉

すかさず男子生徒は、〈小物ですね〉と返しました」


 え?――思わずわたしは声を上げていた。一字一句違わぬその台詞。