よく男子でくちゃくちゃと音を立てながら弁当を食べるクラスメートがいるけれど、小神はそういう男子達とは一線を画している。口の周りにソースをつけることすらないのだ。

 完全に飲み込んでから小神は続けた。

「私はこの能力を悪用するつもりなどとんとありませんでした。例えば教師の夢の中に入り込んで明日のテストの内容を覗き見るだとか――そもそも、そういうピンポイントな心理を垣間見ることは無理でした。漠然と、特定の誰かのその時最も心にかけている事柄――それは多くの場合が悩み事だったのですが――を見ることしかせいぜいできません」

 ほんの少しだけ芽生えていたわたしの「先生の頭の中をもし見られたら……」という希望は一瞬にして打ち砕かれた。そんな便利な力ではないらしい。悪巧みはせんに越したことはないってことか。

「……いいですか、人を選ぶことはできても、知りたい心理に焦点を当てることはできませんからね?」

「はいはい、わかりましたって」

 うっかり残念な表情を浮かべてしまっていたらしく、小神が牽制の一言を放った。

「私が夢を覗き見る能力を持っている間に夢を覗いた人の数はそれほど多くはありません。一番初めに見たのは、私にこの能力を譲ってくれたまさにその女性の夢でした。そのころ私は随分と彼女と親しくしていましたからね」

 そこで小神はちらっとわたしの顔を窺った。

「……」

「……嫉妬してはくれないのですか」

「誰が誰に嫉妬するんですか!」

 さっきから何なんだ? この「私の恋バナに興味持ってください」アピールは!

「いいから話を先に進めてください!」

「わかりました。これがいわゆるツンデレというものなのでしょうね……」

 違うっての。