「で、何か用ですか。何も用がないのなら、どっかに消えちゃってください」
「冷たい台詞ですね。これがいわゆるツンデレというもの――」
「断じて違います」
わたしの対応のどこにデレ要素がある? ツンデレなんて言われたこともないわ!
「冗談ですよ、星野さん。……話しかけたのは貴女がこんな風に突然勉強をする気になったことに驚いたのと、勉強に目覚めた理由が気になっただけですよ。確かにゴールデンウィーク明けには全学年ともに実力テストが待ち構えているわけですが、あんなものの対策誰も本腰入れてやりませんよ。ただ休み中に気を抜くことを防止する教師陣の簡単な策なのですから。それとも、まんまと教師たちの策にはまったということでしょうか」
冗談ですよの一言に、小神の顔面をワークで叩いてその眼鏡を叩き潰してやりたい衝動に駆られたが、それはわたしの振り絞れる最大限の忍耐力で抑えることができた。よく頑張った、わたし。
に、しても。
小神の問いを、胸中で繰り返す。
さて、どうしてわたしはこうして突然勉強に対してやる気を出しているのだろう? 確かに昨日の下校中に友人たちと休み明けのテストの話はしたけれど、小神の言うとおり中間テストや期末テストほどたいそうな試験ではない。
考えるうち、ふと口を突いて出た。
「夢で、見たから、かな」
わたしの口からほろりとこぼれ出たその一言に、小神の表情が一変した。とはいっても、普段仏頂面の小神の見せた表情の変化など微々たるものなのだが、それでも小神の目に鋭い光が差し込んでいることに間違いはなかった。
「夢、ですか」
そういうと、小神は勝手に机上に開きっぱなしだったわたしの教科書やノートを閉じて、こういった。
「ちょっと外に出ませんか」