「学校近くのファミリー・レストランから自転車で来たんですよ。場所は透視能力でわかりました」

 真実と嘘とを半々に織り交ぜて話すと、小神は小さく笑いをこぼした。

「星野さんのジョークのセンスは最高ですね」

「そんなこと話している場合じゃないですよ!」

 わたしは叫んだ。他人の自宅だということに気づいたのは、叫んだあとのことだった。ぐっと声をひそめて、わたしは尋ねる。

「単刀直入にお聞きします。どうして学校に来ないんですか?」

 小神が途端にわたしから目を背けた。目が泳いでいるのがテーブルを挟んだこの距離でもわかる。

 しばらくの沈黙ののち、

「星野さんは私に失望したのではありませんか?」

小神は今にも霧散してしまいそうな声でそう尋ねた。

 そして小神は続けた。彼があれきり学校に顔を出さなくなった理由を。

 少なくとも二年生の我々の前には現れなくなった理由を。