「もしかして梓ちゃん。うちの千秋と知り合いだった?」

「し、知り合いというか……」

「同級生だよ」


あっさりと答えた一ノ瀬くんに、お母さんたちが目を瞬かせ、それからほっとしたような顔をした。


「なあんだ、そうだったの~」

「良かった。同級生なら梓ちゃんも少しは安心じゃない?」

「あ、は、はい。ええと、その……」


どうしよう。

全然安心できないです。

むしろ私たち、あまり仲良くない方なんですけれども。


そう正直に言えず、途方に暮れて足元の小さな白い塊を見下ろす。

ふわふわな毛のその犬は、つぶらな瞳で私を見上げていた。


可愛い。

動物、飼ってみたかったんだよね。

でもうちはお父さんにアレルギーがあって動物を飼うことができない。

犬や猫がいる友だちの家が羨ましかった。


それに小さなお庭のある家も素敵だと思う。

京子さんはさっぱりした性格で接しやすそうだし、春陽くんは人懐っこくて可愛い。

ここは本当にいい環境だと思う。