警察に行った次の日には、お母さんが予定を切り上げひとり帰国してくれた。

お父さんは会社の所有する部屋からホテルへと移り、残りの日数を過ごすらしい。


帰ることができなくてすまない、と電話で言われ、平気だと笑って見せた。

本当に、平気だったから。

一ノ瀬くんが守ってくれたから、私は傷ひとつ負わずにすんだ。

本当に全部、一ノ瀬くんがいてくれたおかげ。


引継ぎをしたらすぐに戻る、と沈んだ声で言ったお父さん。

きっといますぐにも日本に戻ってきたいんだろうなあ。


それが伝わってきたから、笑って「お仕事がんばってね」と言えた。