「遠目に見ても、お似合いだよね」


私の呟きに、なぜか一ノ瀬くんが舌打ちした。

意味がわからない。


「もう、なんなの?」

「うるせー。だからやめとけって言ったのに」


だから、の意味がますますわからないんですけど!

言い返そうとした時、背後から「千秋―!」という声が聞こえてきて、慌てて一ノ瀬くんの手を振り払った。


森姉妹が来る。

ふたりでいるところを見られるのはまずい。


「じゃあね!」


一ノ瀬くんの顔も見ずに、駆け足で職員室へと向かう。

高橋くんたちは階段を上がったのか下りたのか、もう姿が見えなくなっていた。


「千秋ってばどこ行ってたの~?」

「メッセージ送ったのに、見てないでしょ~」


森姉妹の甘えた声が、前よりねっとりと耳の奥にこびりついた。

これも私が一ノ瀬くんへの恋に気づいて、嫉妬しているからなのかな。