昼休み、職員室に用事があって向かっている途中、廊下でばったり一ノ瀬くんと出くわした。

学校だし、誰かに見られるといけないし、特に用事もなかったから、そのまま素通りしようとしたのに、すれ違う時腕をつかまれてドキッとした。


「な、何?」

「どこ行くんだよ」

「どこって、職員室だけど……」

「いまはやめとけ」


なんだか焦っているような声に聞こえたけど、気のせいかな。


「どうして?」

「あー……この先で、男子がケンカしてたから」

「ケンカ? それなら止めないと」

「いや。それより職員室に行くなら、階段降りて少し遠回りして行けばいい」


やっぱりなんか、焦ってる?


おかしいなと思っていると、廊下の向こうから歩いてくる男女が見えた。


高橋くんと、あの三年のマネージャーさんだった。

お互いほんのり頬を染めて、幸せいっぱいな笑顔で隣を歩いている。