あら、愛海さんにしては珍しい。
 いつも快活で自信に満ち溢れていると思っていた愛海さんが弱音を吐いている。

「絶対、ぜーったい大丈夫ですよ! 奈良崎先生、もう三年も前から愛海先輩のことが好きだったって! 飲み会で惚気を沢山聞かされたって、うちの父が言ってましたよ」

「や、やだ。涼ったら」

 赤くなった愛海さんも可愛いです。

「いいですね。相思相愛。憧れます」

 はっきりと羨望する気持ちを声に出したのは初めてだった。でも今、ヤキモチを焼いて、そして幸せそうな愛海さんを見て、私……とても羨ましい。

 そして、心に浮かぶのは──

「心配ね。西園寺先生も」

「いっ、いえ! 私には何の権利もなくてっ! おこがましいです!」

 きっと真っ赤になってしまった私を見て、愛海さんはニコニコしている。私は誤魔化すべく、美味しそうなカルボナーラを口に運んだのだった。



 愛海さんとの楽しい時間も終わり、帰宅して一人になると、ムクムクと想像が膨らんでいく。

 少しだけ。

 とても美しい女性と食事を楽しむ晴正さんを想像してしまった。

 モヤモヤとした感情が心を渦巻いて、私は、なんだか苦しくて、その日は夜更けまで晴正さんの帰宅を待ち続けたのだった。