想いに気付いてからは、彼女に振り向いて欲しくて必死だった。

 偽装婚約を提案してからは、彼女の全てが欲しくて、でもその欲望を知られたくなくて、もどかしい。

 怖いのだ。

 仕事ばかりの貴方はつまらない、他に好きな人がいる、と美月に言われてしまうのが。

 だから、必死に時間を作った。食事も一緒にとるようにしていた。

 俺と一緒にいて、楽しそうに見えたのは俺の勘違いだったのかもしれない。
 手を繋ぐのも、キスも、いつだって俺からだったじゃないか。
 彼女の内心は迷惑だったのかもしれない。

 若い男と笑い合う美月。
 思い出すだけで叫び出しそうなくらい、嫉妬の渦に飲み込まれそうになる。

 しかし言葉にせず曖昧にしてきた関係だけに、彼女を責めることも引き止めることも出来ない。俺にその権利はないのだ。
 
 今になって、はっきりと告げていなかったことを、死ぬ程後悔していた。