桜井さんの職場同様、ウチの会社も、今が定期異動の時期。
俺は引き続き、続投になったが、1年コンビを組んだ三嶋は、本社の建築部門に異動となった。俺とのコンビ解消は、予想出来てたけど、まさか本社のそれも畑違いな部署に移されるとは、本人も周りも思わなかった。
「俺達の仕事は、バトンを繋ぐように、後輩を育てて、あとへ引き継いで行くんだ。」
俺の教育担当だった金澤先輩は、そう言って去って行ったが、俺から三嶋へのバトンは繋がることなく、終わってしまうことになった。
三嶋の後任には、井口という大卒の新入男子社員が配属され、俺が教育担当を拝命した。三嶋からは簡単な申し送りはあったが、あとは俺が仕込んで行くことになる。
そして、いよいよ週明けから三嶋が新しい部署に移るという最後の日、俺は三嶋と2人で呑むことになった。課としての送別会は、栄転人事であり、賑やかで、明るい雰囲気で、既に終わっていた。
しかし、最後に2人で、もう1度送別会をと、三嶋が言い出した。あれだけ彼氏がいるを連呼してた奴が、変われば変わるもんだと思ったが、もう会う機会もなかなかなくなるだろうと思って、OKした。
おしゃれな所なんて、2人きりで行けないぞ、と冗談半分で釘を刺すと、わかってますと笑顔で答える三嶋。結局、個室ではないが、仕切られてるスペースのある居酒屋に予約をとった。
当日、最後に2人きりとはお安くないなと、からかわれたけど、そんな雰囲気はサラサラない俺達は、にこやかに部屋を出た。
そして、居酒屋に入った俺達は、まずは乾杯する。
「三嶋、1年間、お疲れ様。」
「お世話になりました、沖田さん。」
グラスを合わせる俺達。2人で呑むのは、これで2度目。あの時同様、酔っぱらっても送っていかないぞと言ったにも関わらず、急ピッチで飲み進める三嶋。
「おい、そんなに呑んで大丈夫かよ?」
「平気、平気。最後なんだから、心置きなく、楽しく呑も。」
なんて言いながら、上目遣いで俺を見る三嶋。その視線にちょっとドキッとしてしまった俺は
「とにかくだ。お前なら、向こうに行っても、今まで通り、元気よく、何事にも全力で取り組んでいけば、大丈夫だから。」
と先輩面して言ってみたけど
「でも、沖田さんはもういないじゃん。」
「えっ?」
「私が頑張れたのは、いつも沖田さんが見守ってくれてたからだもん。その沖田さんとたった1年で離れ離れにして、全然違う部署に行かせるなんて、会社は酷いよ!」
「仕方ないよ、それが会社の組織っていうもんなんだから。だいたい三嶋は英語もフランス語もペラペラなんだから、ラウンダーなんかより、あっちの部署の方が適任だろ?」
「だったら、最初っから、沖田さんになんか会わせないで欲しかった。この1年、私が沖田さんから教わったこと、向こうでなんか役に立つの?引き継ぎに行ったけど、ちんぷんかんぷんだった。ヤダよ、私行きたくない。もっと沖田さんと一緒に仕事したかった。」
「三嶋・・・。」
「私、寂しいんだよ。沖田さんは、私がいなくなっても平気なの?寂しいとか思ってくれないの?」
早くも酔っぱらっちまったらしい三嶋。想像していたのとは、全然違う雰囲気になって、俺は内心焦り出していた。
俺は引き続き、続投になったが、1年コンビを組んだ三嶋は、本社の建築部門に異動となった。俺とのコンビ解消は、予想出来てたけど、まさか本社のそれも畑違いな部署に移されるとは、本人も周りも思わなかった。
「俺達の仕事は、バトンを繋ぐように、後輩を育てて、あとへ引き継いで行くんだ。」
俺の教育担当だった金澤先輩は、そう言って去って行ったが、俺から三嶋へのバトンは繋がることなく、終わってしまうことになった。
三嶋の後任には、井口という大卒の新入男子社員が配属され、俺が教育担当を拝命した。三嶋からは簡単な申し送りはあったが、あとは俺が仕込んで行くことになる。
そして、いよいよ週明けから三嶋が新しい部署に移るという最後の日、俺は三嶋と2人で呑むことになった。課としての送別会は、栄転人事であり、賑やかで、明るい雰囲気で、既に終わっていた。
しかし、最後に2人で、もう1度送別会をと、三嶋が言い出した。あれだけ彼氏がいるを連呼してた奴が、変われば変わるもんだと思ったが、もう会う機会もなかなかなくなるだろうと思って、OKした。
おしゃれな所なんて、2人きりで行けないぞ、と冗談半分で釘を刺すと、わかってますと笑顔で答える三嶋。結局、個室ではないが、仕切られてるスペースのある居酒屋に予約をとった。
当日、最後に2人きりとはお安くないなと、からかわれたけど、そんな雰囲気はサラサラない俺達は、にこやかに部屋を出た。
そして、居酒屋に入った俺達は、まずは乾杯する。
「三嶋、1年間、お疲れ様。」
「お世話になりました、沖田さん。」
グラスを合わせる俺達。2人で呑むのは、これで2度目。あの時同様、酔っぱらっても送っていかないぞと言ったにも関わらず、急ピッチで飲み進める三嶋。
「おい、そんなに呑んで大丈夫かよ?」
「平気、平気。最後なんだから、心置きなく、楽しく呑も。」
なんて言いながら、上目遣いで俺を見る三嶋。その視線にちょっとドキッとしてしまった俺は
「とにかくだ。お前なら、向こうに行っても、今まで通り、元気よく、何事にも全力で取り組んでいけば、大丈夫だから。」
と先輩面して言ってみたけど
「でも、沖田さんはもういないじゃん。」
「えっ?」
「私が頑張れたのは、いつも沖田さんが見守ってくれてたからだもん。その沖田さんとたった1年で離れ離れにして、全然違う部署に行かせるなんて、会社は酷いよ!」
「仕方ないよ、それが会社の組織っていうもんなんだから。だいたい三嶋は英語もフランス語もペラペラなんだから、ラウンダーなんかより、あっちの部署の方が適任だろ?」
「だったら、最初っから、沖田さんになんか会わせないで欲しかった。この1年、私が沖田さんから教わったこと、向こうでなんか役に立つの?引き継ぎに行ったけど、ちんぷんかんぷんだった。ヤダよ、私行きたくない。もっと沖田さんと一緒に仕事したかった。」
「三嶋・・・。」
「私、寂しいんだよ。沖田さんは、私がいなくなっても平気なの?寂しいとか思ってくれないの?」
早くも酔っぱらっちまったらしい三嶋。想像していたのとは、全然違う雰囲気になって、俺は内心焦り出していた。



