それから、川越さんは目に見えて、私によそよそしくなった。


それまではいろいろ気を遣ってくれたし、たまにお昼も一緒に食べに行ったりしてたのに、確かに業務が同じじゃなくなったこともあるけど、交わす言葉は行き帰りの挨拶くらいになった。それも、まず私の目を見てくれない。


「寂しいのよ、川越ちゃんも。桜井さんともうすぐお別れだから。私達もだけどね。」


パートさんの1人が、そんなことを話してくれた。私が本省に戻るまで、もう1ヶ月を切っていた。


そんなある日、私が1人で昼食を摂っていると


「あのぅ、桜井さん・・・ですよね?」


と声を掛けられた。振り向くとスーツ姿の可愛い女の子が。誰だったかな、と記憶を辿って行くと


「あっ、確か沖田くんの。」


「はい、ご無沙汰してます。」


前に、ここで偶然沖田くんに会った時に一緒だった後輩の子。確か名前は、三嶋さん。


「ここ、いいですか?」


「どうぞ、どうぞ。」


「じゃ、失礼します。」


ちょこんと一礼すると、三嶋さんは、私の前に座った。


「今日は、沖田くんと一緒じゃないの?」


「はい。沖田さんとは、もう基本的に別行動なんで。」


「そっか、独り立ちしたんだ。」


そうか、あれからもう4ヶ月くらい経つもんね。


「沖田くん、元気にしてる?」


「はい。」


「なら、よかった。よろしく伝えてね。」


私がそう言うと、三嶋さんは少し私を見ていたけど、遠慮がちに口を開いた。


「桜井さんは、沖田さんと高校の同級生だったんですよね。」


「うん。」


「それで、その・・・差し出がましいことをお聞きしますけど、お二人の間には何もなかったんですか?」


「えっ?」


私は驚いて、三嶋さんを見る。


「ひょっとして、カレカノだったのかなって・・・。」


「エ〜。」


思わず、驚きの声を上げてしまう。


「全然、そんなことないよ。確かに高校の時、何回かグループで一緒に遊びに行ったことはあるけど、それだけだし。卒業してから会ったのも、この間で、2回目だよ。」


確かに嘘は言ってない。でも何もなかったかと言われれば・・・コクって、見事撃沈した事実はあるけど、ね・・・。


「そうなんですか・・・。」


でも、三嶋さんはハッキリしない顔をしてる。