翌朝、朝一で昨日作成した資料を、課長に提出した。それを一読した課長は、満足という表情ではなかったが、承認印を押すと


「これをすぐに100部コピ-するように。午後一で与党の部会で説明せねばならん。」


「わかりました。」


「とにかく間に合ってよかった。君の作成部分だけ間に合いませんでした、なんてとても言えんからな。君ももう2年生なんだ、もうすぐ研修を終えて、後輩達が入って来る。いつまでも新人気分じゃ困るぞ。」


「はい、申し訳ございません。」


課長のお小言に、頭を下げると、私は部屋を出た。


(こんなはずじゃなかったんだけどな・・・。)


機械の前で、正確に仕分けされて出て来るコピ-資料を眺めながら、私はぼんやり考えていた。


これでも学生時代は、自分で言うのもなんだけど「秀才」で通っていた。高校の時は、学年でただ1人、国立大に合格、卒業式では、答辞を読んだ。


大学に入っても、勉強怠りなく、難関と言われる総合職試験を突破して、目標としていたキャリア官僚となった。


数ある中央官庁の中から、厚生労働省を選んだのは、女性の社会進出、少子高齢化、福祉、労働環境の改善・・・今の社会の問題に寄り添い、改善、解決の為に働く省庁だと思ったからだ。


女性の登用にも積極的であるのも、好感が持てた。事実上の省のトップである事務次官に数年前女性が就いたのも、記憶に新しい。


キャリアの中でも限られている本省勤務の辞令を受けた私は、意気揚々と厚労省の門をくぐった。