それにしても、思わぬ再会だった。あの時以来か・・・。


桜井さんとは、高3の時にクラスが一緒だった。勉強熱心で、クラスメイトとの交流とかにあんまり関心のない子に見えたけど、体育祭でクラス対抗リレーのアンカーを務め、現役の陸上部員を競り落として、クラスを見事優勝に導いたのには、度肝を抜かれた。


白鳥さんの応援で、野球部の練習を結構見に来てたのも知っていた。見かけによらず、スポーツが好きで得意なんだなぁと思った。


そんな彼女と親しくなったのは、受験も終わり、卒業を間近に控えた時期だった。機会があってグループで何回か出掛けて、帰る方向が一緒だったので、2人で帰ったりした。それまでのなんかお高くとまったイメージと違って、とても話しやすい優しい子だった。


それから4年後、クラス会で再会した時に桜井さんから告白された。高校の時から、ずっと好きだったって言われた時は正直驚いた。


桜井さんには、好印象を抱いていたし、嬉しかったのは確かだった。しかし、俺はまだ唯とのことを引き摺っていた。それにキャリア官僚になることが決まっている彼女と付き合うなんて、俺には重荷に思えた。とてもうまく行くとは思えなかった。


俺の返事を聞いた彼女は、会場に戻って来なかった。傷つけてしまったんだな、俺は申し訳ない思いで一杯だった。


そして、実はそれ以来、桜井さんのことはずっと気になっていた。高校を卒業してから、唯と付き合ってたってこともあるけど、桜井さんを思い出したことなんて、ほとんどなかった。


だけどあれ以来、ふと気づくと、彼女のことを考えてることがあった。さっき、三嶋に気になってる人はいないのかと言われて、いないと答えたが、それは実は桜井さんなのかもしれないと、さっきの偶然の再会から、改めて思った。


自分が振ったくせに、おかしいよな・・・。


「沖田さん、沖田さん。」


その声に、フッと我に返ると、運転を交代した三嶋が、心配そうにこっちを見てる。


「バカ。前向いて、運転しろ。」


慌てて一喝する俺。


「あの、沖田さん。ひょっとしてさっきの人、元カノなんですか?」


前を向いたまま、三嶋は聞いて来る。


「違うよ。さっきも言っただろ、クラスメイトだっただけだって。」


「でも・・・あの人に会ってから沖田さん、ちょっと変ですよ。」


「そうか?まぁ彼女に会って、いろいろ高校時代のことを思い出してたからな。だいたいあの子は・・・俺の手が届くような存在じゃないよ。」


そう言った俺の横顔を、三嶋がそっと伺ってたことには、気付かなかった。