「でも惜しいですね。私ホントに、何人かの子から探り入れられてるんですよ。沖田さん、彼女いないのって。」


「お前達、余裕あるな。まだ試用期間も終わっていない内から、もう恋愛談議か。」


2箇所目の取引先から出た俺達は、昼食を摂る為に、ファミレスに立ち寄った。車で動いてる時は、こういう駐車スペースがしっかりしてるところが有り難い。


「そりゃ、みんなお年頃ですから。」


悪びれもせず、笑う三嶋。そう言う俺らも、同期会とかで、盛り上がるのは、上司の悪口とこの手の話題だもんな、結局。


「あれ、沖田くん?」


すると突然、俺を呼ぶ声が。驚いて振り向くと、そこに立ってたのは。
 

「桜井さん。」


なんと桜井さんだった。


「久しぶり。どうしたの?こんな所で。」


「うん、先月から現場実習で、この近くのハローワークに来てて。お昼食べに来てたの。」


「へぇ、そんなのがあるんだ。大変だなぁ。」


「沖田くんは?」


「後輩と取引先周りの途中。」


「そっか。凄いね、もう新人さんの教育係なんだ。私なんて、未だに新人に毛の生えたようなもんだからね・・・。」


そう言って、ちょっと複雑そうな表情をする桜井さん。


「でも、まさかこんな所で桜井さんに会うとはなぁ。桜井さんは当然、霞が関にいると思ってたからな。」


「確かに・・・凄い偶然だよね。」


「久しぶりにみんなで会いたいけど・・・なかなかね。」


「そうだね・・・。」


そんな話をしていると、息を切らせながら、入って来た男子が1人。


「あっ、桜井さん。すみません、さっき桜井さんが相談受けた男性が、どうしても確認したいことがあるって。ちょっとわからないんで、戻ってもらえませんか。」


「わかりました。すぐ戻ります。」


桜井さんの返事を聞くと、その男はまた慌てて出て行く。


「わざわざ走って来なくても、電話くれれば済むのにね。」


そう言って笑う桜井さん。


「誰?」


「事務所の先輩、ちょっと変わってるのよ。じゃ、沖田くん、仕事頑張ってね。」


「桜井さんも、あんまり頑張り過ぎないようにな。」


そう言った俺に、笑顔を向けてくれると、桜井さんは出て行った。


(元気そうで何より、安心したよ。)


そんな彼女の後ろ姿を、俺は見送った。