そして、私は今、家にいる。


昨夜遅く、総一郎から連絡があった。明日、唯さんに会う。会ってキチンと自分の気持ちを話すからって言ってた。


私は「わかった」って答えた。


今頃、2人で話しているはずだ。私達がこれから付き合って行く上で、避ける事の出来ない儀式。それはわかっているのに、私の心に芽生える不安が抑えられない。


自分の恋愛運の悪さは、嫌でも自覚している。もちろん、自業自得の面がなかったなんて言うつもりはない。だけど、今まで本当にこと恋愛に関しては、いい思い出が1つもない。


あの誠実な総一郎に限って、と信じてはいる。でも、総一郎が唯さんを忘れられずに苦しんで来たのは、確かだし


『加奈、やっぱりゴメン。』


なんて、大どんでん返しが起きないなんて、保証はどこにもない。


何、バカなこと考えてるの?そう自分を叱咤しながら、でも過去の嫌な思い出が甦って来て・・・正直、食事もあまり喉に通らない有様だった。


どのくらい、そんな時間を過ごしたのだろう。ついに携帯が着信を告げる。私は夢中で電話に出た。


「もしもし。」


『加奈、今実家に戻って来た。』


「うん。」


『あのさ、これから会えないかな?』


「えっ?」


それって、どう言うこと?わざわざ呼び出すってまさか・・・不安に慄く私。でも


『加奈に会いたいんだ、加奈の顔が見たいんだよ。ドライブ行こう、海、見に行こうよ!』


そんな私の不安を吹き飛ばしてくれるように、総一郎は明るく私を誘ってくれる。バカだな、私。なんでこんなにマイナス思考なんだろう、総一郎が私を悲しませるわけないじゃない!


思わず目に涙が浮かんで来てるのを隠すかのように、私も明るく答える。


「うん、行きたい!連れてって、総一郎。」


『よかった。じゃ、すぐに迎えに行く。待ってて。』


「うん!総一郎、気をつけてね。」


『ありがとう。』


(本当にありがとう、総一郎。)


そう心の中で、彼に思いを伝えると、私は涙をそっと拭った。