そして迎えた初めてのクリスマスイブ。本当はどこか綺麗なイルミネーションを見に行きたかったけど、唯の門限が相変わらず7時なのがネックで、結局遠出は断念。


昼間、横浜の街を楽しんだ俺達は、夕方山下公園に足を運んだ。夕方と言っても、冬の日の落ちるのは早い。5時には真っ暗になった公園から見える夜景は、2人で見れば、なんともロマンチック。


俺達は、その光景をしばし、寄り添って眺めていたけど


「ねぇ、ソウくん。」


と唯が俺を呼ぶ声がした。


「うん?」


「ソウくんは唯のこと、好き?」


「えっ?」


あまりにも当たり前のことを今更聞かれて、俺は驚いてしまう。


「ねぇ、ソウくん。」


俺が瞬時に返事をしなかったから、唯は不安そうな表情で、俺を見つめる。


「ゴメン。あまりに当たり前のこと聞かれて、驚いちゃったんだよ。もちろん大好きさ。」


「ホントに?」


「ホントだよ。どうしたんだよ、急に。」


どうにも様子がおかしい唯に、俺も不安になる。


「だって・・・付き合い始めて、もう8ヶ月だよ。なのに・・・唯はまだソウくんの本当の彼女にしてもらってない・・・。」


そう言うと顔を真っ赤にして俯く唯。一瞬、言葉を失った俺は、唯が言いたいことに気付いた。


「唯ちゃん・・・。」


「それに、その呼び方も。友達はみんな、彼氏から呼び捨てで呼ばれてるよ。なのに、ソウくんはいつまで経っても『唯ちゃん』。だから、本当は唯のこと、気に入ってないんじゃないかと思って・・・。」


悲しそうにそう言う唯。


「それは誤解だよ。」


慌てる俺。


「呼び方は、僕がそう呼びたいから呼んでるんだ。それに・・・その、なんだ・・・アレについては・・・少なくとも、唯ちゃんが高校生の間は、するつもりはないよ。」


「なんで?」


「唯ちゃんが好きだから、唯ちゃんを大切にしたいから。」


「ソウくん・・・。」


「そうだ、これ。」


俺は、バッグから箱を取り出した。


「メリークリスマス。」


そう言って、俺はそれを彼女に差し出す。


「いつ渡そうかと思ってたんだけど・・・クリスマスプレゼント。」


「本当?嬉しい。ありがとう、開けてもいい?」


「もちろん。」


唯が、箱を開けると


「わぁ。」


思わず顔をほころばせる唯。


「指輪・・・。」


「残念ながら、オモチャに毛が生えたくらいのものだけど・・・初めてのクリスマスイブの記念に。お揃いなんだ、一応。着けてくれるかな?」


次の瞬間、唯は俺の胸に飛び込んて来てくれた。


「ありがとう、大切にします。ゴメンね、変なこと言って。ソウくんが、唯をこんなに大事に思ってくれてるなんて・・・。」


「唯ちゃん、いや唯。好きだよ、だからこれからもずっと一緒にいような。」


「うん。」


俺達はお互いの気持ちを確かめ合うように、唇を重ねた。