食事が終わった後は、中華街を少しブラついた後、私達はホテルへ。


ホテルの窓から、明るく眩しい横浜の海が広がっている。私達はその光景をしばし、寄り添って見つめる。


「加奈。」


「うん?」


「報告しなきゃならないことがある。」


「なに?」


なにか事態に進展や変化があったのだろうか、私の中に緊張が走る。


「俺の親に君のことをある程度、話した。」


「えっ?」


意外な言葉に私は驚く。


「まだ、時期尚早の気は確かにするんだけど、実は・・・絵里が俺の知らない間に、最近よく遊んでくれるお姉ちゃんがいるって、無邪気に親に君のことを話したみたいで・・・。」


そうなんだ・・・。


「親も気になったらしく、俺に聞いてきた。それで、隠すことでも、誤魔化すことでもないから、厚労省の同僚で、真剣にお付き合いさせてもらってること、嫁さんのことが起こる前からの交際では断じてないということは話させてもらった。勝手なことをして、すまなかった。」


「とんでもありません。それでご両親はなんて・・・。」


やはりそれは気になる。


「少し軽率だったと思うが、そういうことなら、お相手の女性にご迷惑をかけるような真似は絶対にするなと言われたから、当然わかってると答えた。」


私を真っ直ぐに見て、和樹さんは言う。


「だから、今日も君の誕生日を一緒に祝う為に出掛けるって、ハッキリ言って出て来たから。迷惑だったかな・・・?」


ややバツが悪そうにそう言う和樹さん。そんな和樹さんに首を振る私。


「迷惑なわけないじゃない、嬉しい。」


「君のご両親にも、そのうち、キチンと挨拶に行くから。」


「はい。」


「それと・・・。」


というと、なにか小さな包みを差し出す和樹さん。小首をかしげて、彼を見た私に、和樹さんは言う。


「たいしたものじゃない。でも何か誕生日のプレゼントと思って、キーホルダー、さっき中華街でちょっと良さそうなのがあったんで、買ってみた。」


いつの間に・・・全然気が付かなかった。


「ありがとう、開けてみてもいい?」


和樹さんが肯くのを見て、私は包みを明ける。


「可愛い・・・。」


「こんなものしか用意出来なくて、ゴメン。指輪とかいきなり渡しても、重いかなと思って・・・。でも、来年はもっと、ちゃんとした物を渡せるようにするから。」


そう言って、私を見つめる和樹さん。次の瞬間、私は彼の胸にとびこんだ。


「ありがとう。付けさせてもらいます。とっても嬉しい。」


「加奈。」


呼ばれて、和樹さんを見上げる私。その私の唇に、静かに和樹さんのそれが重なった。