今頃、学校では朝のホームルームが始まってる時間帯か?


そんなことを、考えていると。



突っ伏していた顔をもぞもぞと動かして肩を上下に揺らしたあと、ノゾミが目を覚ました。


「…………あれ、マサト……、起きてる……?」


「おー、おはようさん。その節は世話になったな。あと、口からヨダレ垂れてんぞ」


寝起きで指摘されたことも理解していないまま、思いきり飛び乗ってきやがった。


……いや、ノゾミにとってそんなこと、どうでも良かったんだろうな。


「うわぁぁぁぁぁん!!!! よ、よがっだぁぁぁぁぁ」



終いには鼻水まで垂らしながら、なりふり構わず俺に抱きついてきたのだから。



雨上がりの虹を見つけた子どもみたいに、感情のままに喜びを顔に映し出して。



「マサトが死んじゃったら、どうしようって、……。ううっ、……わたし、怖かったんだよ……っ」


馬鹿みてぇにぐちゃぐちゃに泣なきながら、鼻水垂らして笑って。


「……生きててくれて、本当に、……よがっだ……」



俺に、生きててくれて良かったなんて言うのは。


こんな気持ちをくれるのは。


……お前だけだよ。



しかし、伝えたい想いは心の奥底にしまい込んで、誤魔化す。


……なぜなら、ノゾミが俺の足元から離れてからも両足に纏わりつく痺れが取れないからだ。


嫌な予感が、頭をよぎる。