「本当に見えないんだね」


ソレへ向けて声をかける。


ソレは楽し気に笑った。


「ご飯の準備をしなきゃね」


体調が悪くても、この子の世話はしなきゃいけない。


あたしがいなきゃ生きて行けないんだから。


そう思うと、自然と元気が出て来る。


誰かに頼られているということは、自分の生きる活力になるみたいだ。


ベッドから抜け出し、先生の机の横に置かれているゴミ箱へと向かった。


蓋つきのゴミ箱の中を確認してみると、さっきの生徒が使ったと思われるティッシュが入れられていた。


しっかりと血がついている。


あたしはそれを素手でつかみ、鞄の中のソレへ差し出してみた。