あたしの涙はいつの間にか消えていて、高いフェンスをよじ登っていた。


こんなフェンスを越えることができるなんて、思ってもいなかった。


あたしは簡単にフェンスを乗り越え、そして躊躇することなく山道を歩き出していた。


この先になにがあるのかなんてわからない。


ただ導かれるままに歩く。


途中で山道が終り、山道に差し掛かってもその足は止まらなかった。


むしろ、あたしの歩調はどんどん速くなっていく。


息が切れても、スマホが震えても、足を止めることはなかった。


やがて周囲は真っ暗闇に包まれてた時、不意に前方が開けた。


月明かりに照らされて、そこだけ広間のようになっているのがわかる。


広間中央には小さな祠があり、そこから「おいで」と、響くような声が聞こえてくるのがわかった。