約束~悲しみの先にある景色~

(私みたいな、経験…?)


「えっ…」


その発言に驚いた私は、思わず口を開けたまま固まった。


もちろん輝星は、私が過去に前のお父さんに何をされたか知っている。


だから、輝星は1回も私の肩を叩いた事が無いし、その話題を彼女の方から出した事もほとんど無かった。


そのせいで驚いたのもあるけれど、アイドルグループの中に私と似たような経験をした人かいるという事実に、もっと大きな驚きを感じていた。


それと同時に、promiseの内の誰かは、そんな経験を乗り越える事が出来たのだという尊敬の念も。


「それで、promiseは主に、そういう経験をしたからこそ分かった事とか伝えたい事とかを歌にして私達に教えてくれてるの。だから、歌全体も歌詞も全部、きちんと聴くと心に響くものばかりなんだよ」


眉を下げて笑った輝星は、続いてそうつけ加えた。


「そう、なんだ」


「うん」


心此処に在らずといった私の相槌に、これまた私の気持ちを汲んで心がこもっていない同意の声を上げた彼女は、一転してすぐにパンと手を叩いた。


「あっ、瀬奈、立ってたら話聞きにくいだろうから座りなよ!」


慌てて強制的に気分を高めた私は、にこりと笑って頷いた。