恐ろしい程のスピードで、心臓が体に血液を送り出しているのが分かる。


「はあっ、はあっ……」


付けたままの電気の光に目を細めながら、時間を確かめる。


まだ、真夜中の2時だった。


(……夢、か…)


先程の身の毛もよだつ様な、片足を複雑骨折したあの出来事が、過去の事を映した夢だとようやく分かった私は、大きくため息をついた。


隣の部屋で寝ているお母さんを起こさない様に気を付けながら、すっかり目が覚めてしまった私は瞬きを繰り返した。


昨日と、同じだった。


昨日も、私はお父さん関連の夢を見て、余りの怖さに飛び起きたのだ。


「怖かったぁ……」


未だに、酸素を求めて心臓がバクバクと激しく動いているのを感じながら、私は悪夢で疲れ切った身体を壁に預けてもたれかかった。


(キムさんが怖いから、そういう夢見たんだと思ってたんだけどな…)


もしかしたら。


(…私、キムさんの息子さんも怖いのかな…)


心のどこかでは、キムさんだけでなく、彼の息子の事も怖いのかもしれない。


前のお父さんと同じ様に、何かされるのではないかと心が拒否しているのかもしれない。


「…何で、?……キムさんもキムさんの息子さんも怖くない、はずなのにな」