そして。


「それじゃあ、お邪魔しました。안녕〜(じゃあね〜)」


玄関のドアがバタンと閉まった直後、お見送りに玄関に居た私とお母さんは、思わず顔を見合わせた。


(あの韓国語、何…?)


どうやら、お母さんも同じ事を考えたらしく。


「…アンニョンって何?」


そう、私に尋ねてきた。


「…私も分かんない。じゃあねとかそういう意味じゃない?」


韓国語は未知の言語だと捉えている私が、何も考えずにそう答えると。


「…なるほど、お母さんも会社の同僚に今度から使ってみようかな」


お母さんは、そんな事を言い始めた。


「止めた方がいいよ」


彼女に真顔で警笛を鳴らした私は、正しい選択をしたと思う。




その日の夜。



『おいっ、お前はどうしていつもこうなんだ!?』


『っ…嫌だああぁ!』



私は、またあの夢を見ていた。



『逃げるな!』


『やだ、やだやだっ!』


まだ死にたくなくて部屋から逃げても、すぐに捕まる。


『これはしつけなんだ!お前が何も出来ないから、俺が1から教えてやってんだよ!』


ごめんなさい。


言うことを聞けなくて、何も出来なくて、ごめんなさい。