「そうなのね、分かった。…じゃあ明日、時間は?」


「今日と同じで良いよ。息子も予定は無いだろうし」


鞄を持った彼は、お母さんに向かってふわりと笑いかけた。


「分かった。じゃあ優作、気を付けてね」


「うん。また明日」


そして、私とお母さんに軽く会釈をしてリビングから出て行こうとするキムさんを。


「あ、キムさん!」


私は咄嗟に、呼び止めていた。


「ん、?」


不思議そうな顔をして振り返る彼に、私は先程の違和感の原因を尋ねようとして、そもそもその原因が何か分からない事を思い出し。


(え、こういう時ってどうするんだっけ)


と、自分のコミュニケーション能力の無さに泣きかけながら。


「あの……、キムさんの息子さんは、どんな…性格ですか?」


必死で、呼び止めた理由に相応しい疑問を考えて投げかけた。


「んー、」


キムさんはくるりと振り返ったそのままの姿勢で、少し考え込み。


「…自分で言うのもなんだけど、あいつは優しいよ。大丈夫瀬奈ちゃん、僕の息子は怖くないから」


それだけは胸を張って言えるんだ、と、キムさんは私に向かって頷いた。


「…ありがとうございます」


彼は、また花が咲いた様にふんわりと笑って頷いた。