お父さんからの暴力がかなり酷かった為、警察はお父さんに懲役10年の刑を下した。


保釈後も、私やお母さんを含むお母さん方の親戚に近付かない事、という条件もつけて。




けれど、彼が逮捕されたからといって悪夢が終わるわけでもなかった。


それから1年間、私は虐待の悪夢に苦しめられ、日中だろうとなんだろうと、どこに居ても怖くなってお母さんの元に飛んで行った。


クローゼットに閉じ込められたあの時を連想する為、夜も暗闇も怖くなり、寝る時は最低でも豆電球をつけないと寝れなくなった。


外出をするととにかく男性の目が怖くなり、何もされていないのに泣いてしまうし、どんなに些細な事でも謝る様になってしまった。



それらは、専門的なリハビリや心のケア等で改善されたものがほとんどだけれど、未だにこれだけは治らないものがある。


それは、肩を触られる事だ。


右肩だろうと左肩だろうとお構い無しに、とにかくそこを触られると私はあの日を連想してしまう。


お父さんによって包丁を肩に突きつけられた、あの日を。


あの日の恐怖が蘇ってきて、あの人の光を失った目が思い出されて、あの人の頬を歪ませて笑うあの表情が脳裏に貼り付いて、肩を切られた痛みが蘇ってくる。