次々とお母さんの口から飛び出す疑問に、私は何も答えられなくて。


「っ………」


お母さんに背を向けているお父さんは、ただただ私を睨みつけていた。


まるで、“全部お前が悪い”とでも言うように。



(………)


私がそんな彼の真っ黒な目から視線を外すと同時に、お母さんがまた声を上げた。


「待って瀬奈、何でそんなに傷だらけなの?何で血まで出てるの?何してたの?何があったの?えっ?どうして服脱いでるの?しかもお父さんは何やってるの?ちょっと待ってあんた瀬奈のどこ触ってんの!?」


そして彼女はぐるりと周りを見渡し、見てしまった。


床に落ちた、包丁を。


床にバラバラに散らばる、文房具類とテレビのリモコンを。


割れてしまった、食器を。


そして、お父さんが投げて床に当たった衝撃で壊れた、椅子を。




「……お父さん」



次に発せられたお母さんの声は、今までに聞いた事が無い程震えていた。


「……警察に、連絡しなきゃ」


そう言った直後、恐ろしいスピードでお父さんを突き飛ばし、彼を射殺すような目付きで睨み付けた彼女は、ほぼ裸の状態でガタガタ震えている私を固く固く抱きしめた。



「……瀬奈、もう大丈夫だよ」



その瞬間、私は全てが終わった事を悟って。


静かに、私を助けてくれた彼女の胸の中で、枯れたと思っていた涙を零した。