「っ………無理無理瀬奈ちゃん、お願いだから俺を泣かせないで…!」


それまで私から目を逸らせていた彼は、嗚咽を必死で抑えながら私の事を抱き締めてきた。


「私は…別に、トユンさんを頼りたかったんじゃなくて………、トユンさんを困らせたくなくて、頼れなかった、だけ、…なんですっ、………私の中で、トユンさんは最高の義兄なんです、!」


私の顔を、涙なのか鼻水なのか分からないそれがどんどん流れていく。


私の台詞を聞いた義兄は、一層私を抱き締める力を強めて。


「ねえもう何にも言わないでっ、……俺、瀬奈ちゃんの事大好きだから、瀬奈ちゃんは俺にとって最高の妹なのっ…!………過去に何があったって、瀬奈ちゃんは瀬奈ちゃんだから…それは変わらないからっ!」


掠れた声で私の心に物凄く響く言葉を吐き出した義兄は、黙り込んだ私に向かって優しく呼び掛けた。


「瀬奈ちゃん、今まで良く頑張ったね。……もう大丈夫だから、もう瀬奈ちゃんは独りじゃないから、思いっきり泣いて良いよ」


抱き締められたままの私の中で、何かが音を立てて弾けた。


(あ、)


そう思った瞬間にはもう、私の目からはとめどなく涙が流れていた。


流れて落ち続けるそれは、私の頬や服を濡らして、終いにはトユンさんの服に染みを作る。


(っ、)