それに、義兄ばかり沢山話して私が何も話さないなんて。


(そんなの、嫌だ)


(私の方が、話さないといけない事が沢山あるのに)


(トユンさんだけがそういう思いをしてる訳がないもん)


だから、私は深呼吸をして口を開いた。


「……トユンさん、私も話したい事があります」


この時の私の中には、恐怖や恥ずかしさ等のマイナスな感情は何も無かった。


ただあったのは、


『トユンさんに話して、私がトユンさんを頼らなかったのは頼りたくなかったからじゃない、頼れなかったから』


という事を伝えたいという思いだけ。


キムさんがもう伝えてくれているだろうけれど、自分の口からも言わないと何だかこの胸のつかえは取れない気がして。


私は振り返り、明かりのせいでキラキラと光って見える彼の瞳を見つめ、彼の驚いた様な顔をしっかりと目に焼き付け、重く閉ざされた口を開いた。


「私は、……小学1年生の頃から4年生の頃まで、実の父親に……………」


楽人さんに伝えた時よりももっと詳しく、鮮明に、忘れようと努力してきた嫌な記憶も全て思い出して。


私の心の奥の底、父親と私だけの嫌な思い出の詰まった箱を、私はゆっくりと開けた。