「俺さ、ユナとサラに全然お兄ちゃんらしい事出来なかったから…。頼られるべきなのに、むしろ頼って欲しかったのに、あの2人は俺の事なんてどうでもいいみたいでさ」


部屋に、1度流れ出したら止まらない彼の悲痛な願いがこだまする。


「…正直、アッパが再婚して新しく妹が出来るって聞いた時凄い怖かったけど、これはリベンジする…兄として頼られるチャンスだなって思った」


今度こそ、血が繋がっていなくてもちゃんとしたお兄ちゃんになりたかった…、と、言葉を絞り出した彼は今、何を思って何を見ているのだろう。


月の光を求めながら必死に息をする私とは真逆の世界に生きる、太陽に照らされて楽しく幸せに生きるトユンさん。


彼は沢山のものを自分のものにして、私から見ると人生が全て思い通りにいっている雲の上の存在だと思っていたけれど。


本当のトユンさんは、沢山のものを与えられて自分のものにしていく度、自分にとって何よりも大切なものを無くしたり、私達と同じ位、いやそれ以上に悩んだり苦しんだりしていたのだ。


彼は、アイドルである以前に頼られる事を求める1人の少年だった。



(だから、楽人さんはあの時に)