「あっ……」


自分のしでかしたミスに気付いた。


「間違えちゃった…今から入れ替え……」


「うるせえな」


(!?)


お茶に入れ替えようと、お父さん用のコップを手に取った瞬間に聞こえてきた、お父さんのとげのある言葉。


「お前って、何やっても使えねえのな」


「えっ……?」


後ろに居る人は、誰なのだろう。


私の知っているお父さんは、私に1度もこんな乱暴な言葉遣いをした事がなかった。


(何っ……?)


「何やってんだよ、さっさと入れ替えろよ!」


彼の言葉の一言一言が、透明で綺麗な輝きを放っていた私の心に、どす黒い色を塗っていく。


「うっ……」


お父さんの豹変ぶりに、私は既に目に涙を貯めながら、震える手でお父さんのコップを掴んだ。


口もつけられていない、注いだばかりの私の大好きなオレンジジュースをシンクに捨て、また冷蔵庫を開けようとして。


(あれ、包丁が……)


私は、いつも包丁が入っているキャビネットが開かれていて、包丁が1本無くなっている事に気付いた。


(何で?あ、お料理に使ったのかな)


そう思いつつ、私はお茶の入った大きなペットボトルを取り出し、それを小刻みに揺らしながらお父さんのコップに注いだ。


そして、冷蔵庫にまたペットボトルをしまいながら、何気にひんやりとしている右肩に目を向けると。