彼の口調がいつもと少し違う事に、微塵も気付かずに。


「お父さんのお茶ー」


そう言いながら、私は他の事も考えていて。


(私、オレンジジュース飲みたいな)


だからだろうか。


私は、自分の分のコップとお父さんの分のコップ、どちらにもオレンジジュースを注いでしまっていたのだ。


それに気付かず、私は、


「見て、出来た!」


と、いつもの様に誇らしげに言いかけたけれど。


「っ……?」


右肩と首に違和感を感じ、言いかけた声は喉の奥で止まってしまった。


何か、冷たいものが首筋に当たっている気がする。


しかも、後ろにお父さんの気配を感じる。


(お父さん?)


「お父さん?」


いつも通り、私はお父さんの方へと振り返ろうとしたけれど。



「おい」


お父さんの冷たい口調が、私を振り向かせる事を許さなかった。


「っ…?」


今までに聞いた事のない声に、お父さんっ子である私もさすがに驚く。


お父さんの口から、“おい”と発せられたのだ。


信じられなかった。


そもそも、その言葉が誰に向かって言ったものなのかもよく分からない。


「何じゃないだろ、お茶はどうしたんだよ」


(えっ?お茶ならここに……)


そう思い、私は2つのコップを見て。