約束~悲しみの先にある景色~

会話はほぼ韓国語だったけれど、その口調や漂う雰囲気から、トユンさんが責められているのは理解が出来た。


けれど、何故そうなったのかは分からなくて。


荷物を押し付けられた格好のまま立ち尽くすトユンさんが心配になって、私がそっと声を掛けると。


「あ、……미안해(ごめんね)」


たった今夢から目覚めた様に、彼は数回瞬きをして私に背を向けて歩き出した。


「あの、…」


その背中からは、落ち込んでいると言うか何と言うか、とにかく沈んだオーラが感じられる。


そんな彼に何て言えばいいか分からなくて、それに彼は仮にもアイドルだし、色々と抱えるものは私よりも大きくて重たいはずだから。


そんな私の想いが少しでも届いたのか、義兄は、


「미안 해요, 괜찮 으니까(ごめんね、大丈夫だから)」


そう小さく呟き、そのままらせん階段を上って行ってしまった。


さすがの私でもその韓国語の意味は理解出来るから、余計心配になってしまって、でもそっとしておいた方がいいと思って。


一応彼を追いかける様にして自分の部屋に入ったものの、何もする事が無くて。


仕方ないから、私はトユンさんの部屋がある方の壁に頭を寄りかけて座った。


隣の部屋からは、微かに音楽と韓国語の声が聞こえて来るだけで。



結局その日は、両親が帰宅するまでトユンさんが部屋から出てくる事は無かった。