俺はふっと息を吐き、なるべく彼女の肩に触れないようにしながら彼女の身体をゆっくりと持ち上げた。


いつだったか、彼女の肩を触った際に彼女が信じられない程パニックを起こして泣き叫んだ事を思い出したからだ。


ソファーに瀬奈ちゃんを寝かせた俺は、自分の部屋からコートを持ってきて毛布代わりに掛けた後、自分自身も瀬奈ちゃんの隣に座った。


枕代わりになればいいな、なんて思いながら瀬奈ちゃんの頭を俺の膝の上に乗せ、つられて眠くなってきた俺も目を瞑った。





トンッ……


何かが私の首筋に当たり、私ー南 瀬奈ーは目を開けた。


「んっ……」


天井が見える。


ぱちぱちと瞬きを繰り返し、私はここはどこかを確かめる。


首だけを動かして周りを見ると、どうやら私はソファーの上で寝ているようだった。


トユンさんが運んでくれたのだろうか。


(絶対重かったよね、ごめんなさい)


トユンさんの、


『瀬奈ちゃん、重っ…』


とか何とか言っている姿が目に浮かび、私は反省の意味も込めて下唇を噛み締めた。


それにしても、私の首筋に当たっているものが気になる。


「ん?」


“それ”を持ち上げてみると。


「え、?」


誰かの片腕だった。


(これ、どうなってるの?)


そこで、ようやく私はある素朴な疑問にぶち当たった。