「そんな事ないよ。だって俺も寝ようと思ってたし。一緒に寝れば、誰も邪魔した事にはならない」


ね?ほら、俺のオフの日は充実したよ、と可愛らしく言う彼に、眠いはずなのに勝手に心が踊ってしまう。


(さすが、アイドル……)


「だからさ、」


不意にトユンさんの顔が視界から消え、綺麗に私の視界の左半分にまた彼の顔が現れた。


「寝よう?…ね、괜찮아(大丈夫)」


その韓国語と日本語が混ざった言葉を聞いて、特に意味は無いと思うけれどどうして“大丈夫”と言ってくれたのか疑問に思う反面、それが凄く嬉しくて。


「……おやすみ」


(トユン、さん…)


どうして、彼はこんなに優しいのだろうか。


(私のお父さんも、この位優しかったらな……)


もしお父さんが優しかったら、きっとトユンさんとは出会えていなかっただろうけれど、それでも思ってしまう。



右目を、一筋の涙が耳にかけて伝った。


「えっ、どうして泣くの…」


私の左側に居たトユンさんが、困った様な声を出して片手を私の頬に近づけた。


その手が私の頬に触れ、私の頬を流れる涙を拭いたその瞬間。


私は、ふっと意識を手放した。